前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―


あっさりと背後にいた俺をどうぞどうぞと差し出すフライト兄弟。生々しい裏切りを見た。

ひ、ひでぇえっ!

自分の身が可愛くてオトモダチを売るとかひでぇえっ!


気持ちは分からないでもないけど、でもやっぱりひどっ、うぇええをおおい先輩勘弁っすよぉおおお!


逃げようとする俺の左腕をしっかり掴んだ先輩は、鼻歌交じりでそのまま俺の体を持ち上げ、肩に担ぐ。


お姫様だっこじゃないだけマシだけど、これはこれで小っ恥ずかしい。

図体のでかい後輩が、小さな体躯の先輩に担がれているとか、男の自尊心ズタズタだっ!


「おろして下さい」「問答無用」ジタバタ暴れる俺をスルーして教室を出る鈴理先輩は、ズンズンと廊下を歩いていく。


「ああああっ、豊福空っ、鈴理さまにっ、キィイイイ! NのくせにM的なことをされるなんてっ!」

「泣くな高間。いつか、いつかあいつと鈴理くんの仲を引き裂くんだ。それまで涙は取っとけ」


廊下の隅でジェラシーをムンムン放ちながらこっちを睨んでいる『鈴理さま見守り隊』の親衛隊隊長と副隊長を見つけてしまった。

果たしてこれはM的なことをされているのだろうか? ヤられている時点でM? いやいや認めないっすけどね! ……あ、そうだ。 


「先輩。今日の放課後、大丈夫っすか? LINEしたと思うんっすけど返信こなかったから」


首を捻って質問。

先輩をお誘いしたい場所があるんだけど。


「ん? ああ悪いな、返信できなくて。大丈夫だ、空けておいたから。空から誘われるなんてな。やっぱりシたいのではないか!」

「都合の良い解釈しないで下さイダダダダッ、先輩。今、横っ腹の痣にっ」


この体勢はちょいキツい。

訴えれば、ひょいっと俺の体を横抱きにしてくれる……これはこれで泣きたいんっすけど。やっぱお姫様抱っこに落ち着くんっすね。

「顔が見れた方が良いな」

したり顔の先輩に、「またそういうことを」唸る俺。


「嫌いではないだろ? 空はあたしのこと、好きだもんな?」

「ぐっ」

「嫌いか?」


この愉快痛快確信犯。俺の気持ちを知っているくせに。

赤面した俺は「重症っす」敢えて好きを口に出さず、負け惜しみでその場を凌ぐ。

ツンデレ反応だと大爆笑してくれる先輩に超悔しい気持ちを抱いた。

誰がツンデレ! 俺、先輩の攻めにツンどころかタジタジっすよ! タジデレっすかね、こういうの。

< 439 / 446 >

この作品をシェア

pagetop