青蝶夢 *Ⅰ*
芳野は、眠る伊吹の横顔を
見た後、彼女の腕を掴んだ。

「ここじゃ、ちょっと
 表に・・・・・・」

彼女は、芳野の肩に腕を
回して背伸びをして
その唇に口づけた。

赤い口紅が芳野の唇を彩る。

「やめろよ」

「ふ~ん
 まっ、別にいいわ
 
 どこかにいい男は
 いないかしら」

芳野が座っていた席の隣で眠る
伊吹の顔を、彼女は覗き込み
そして、その頬に手を翳した。

「カヤノ?」

「寝言で、彼女の名前を
 呼ぶなんて、可愛い人ね
 
 それにしても
 綺麗な寝顔・・・
 
 彼、ヨシノの友達なの?」

「ほら
 もう、いいから帰れよ
 ・・・」
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