青蝶夢 *Ⅰ*
「お前、誰が父親なのか
 見当がついてるのか?」

秘色の顔が見る見る
青褪めていく。

芳野は思う。

『もう、これ以上
 聞いてはいけない』

診察室の中・・・

先生の声・・・

私は、神の残酷な宣告を
聞かされているようだった。

嬉しさなんて感じる事無く
ただ、困惑していた。

「出産を希望なされない場合は
 その後の、診察、手術は
 一日でも早い方がいいかと
 ・・・・・・」

青褪める私に、医師は
そう告げた。

診察を終えた、秘色が
出て来た。

彼女は、今までに見たことが
ない程に頼りなく、儚く見えた
< 345 / 434 >

この作品をシェア

pagetop