ガラスのタンポポ
声なき声
オトばあの葬式から、2週間が経った。


あれから奏来は1日も学校へ来ていない。


放課後も奏来の家へ寄るけど、チャイムを鳴らしてもおばさんしか出て来ない。


出かけているのか、居留守なのか、奏来はオレを避けているように思えた。


授業が終わり、オレは奏来にメールする。


“今日、帰り寄ってもいい?”


Re“明日は学校に行くから”


今日も会えない。


兄貴も同じように遠ざけられているのだろうか。


取り残されてるのはオレだけなんじゃないか、なんて思い始めると居てもたってもいられなくて、兄貴のケータイを鳴らしてた。


『どうした?翔?』


「兄貴、仕事中だけどちょっといい?」


『あぁ。何だ?』


「奏来の事なんだけど…。何か聞いてねぇかな、って…」


『どうして俺に?』


「いや、学校にも来ないし、家に行っても会えないんだ。兄貴なら、何か知ってるんじゃないかと思って、さ」


『翔』


「何?兄貴?」


『1ヶ月、何も聞かずに待ってやれ。それから奏来にしてやれる唯一の事だ』


「知ってんのかよ?奏来に何が起こってる?」


『いいか、待て。奏来の望んでる事だ。奏来を大切に想うなら、問いただして苦しめるような事はやめろ。いいか?わかったか』


それだけ言われ、電話が切れた。
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