黒紅花
だけど祖母の前で柴田さんを庇ってみせる母の姿を見ていると、それも時間の問題だと思った。

「まだ、答えは出せないわ
 
 迷っているの……」

祖母には母はそう言っていたけれど、その夜、母は私の部屋に来て言った。

私が横たわるベッドの端に、腰を掛けた母。

「……

 柴田君、彼ね、ひと月後には
 仕事の都合で海外へ赴任されるの」

海外赴任----その件が無ければ、母は柴田さんとの結婚は考えなかったと話す。

「海外?
 
 ママ、仕事は?」

母は、首を強く横に振った。

「ママね、できれば一緒に
 ついて行ってあげたい

 チトセ、もちろんあなたのことも
 おばあちゃんのことも
 彼は是非一緒にと言ってくれてる

 こんな話、嫌だとは思うけど
 一度よく考えてみてくれる?

 でもこれだけは言わせて
 あなたが嫌ならママは行かない」

「嫌だよ!」
< 321 / 409 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop