黒紅花
この目に映る光景は、いつか見た光景----

また、この場所に戻ることになってしまったけど、私の胸は晴れ渡っていた。

心と体に傷を負ってここに立ってた、あの時とは違う。

愛する人と別れてここを逃げ出した、あの時とは違う。

ひさぎのことを想うと確かにこの胸はまだ痛むけど、私はもう一度ここから歩き出す。


懐かしい場所に住み、最寄りの駅内にあるファーストフード店で働いている私はその帰り道、ふと何気に騒ぐ人達の方を見た。

「もう、やめてよねぇ~」

歩く男性達の中に、見覚えのある学生服の女の子が一人。

私は、なぎの姿を見つけて驚く。

なぎの隣を歩いている男性は、まさか例のおじさん?にしては格好が若い……

「あっ!」

よく見るとその男性は、普段着姿の常盤君だった。

「ナギちゃん、どうしたの?
 
 どこ行くの!?」

常盤君の声も、今のなぎには届いていないみたい。
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