ACcess -操-
扉に手を掛け、開けようとした。

ふと思い立ち、アリスに聞いてみた。
「…アリスって、装備のエフェクトはずっとそのままだよな?」
「…そうだけど?」
「いや…なんでもない。」
「?」

前に黒い装備を1度見た事がある気がした。

ただ、あやふやだったから今まで聞けなかったけれど、やっぱり違うようだ。

「いや、気にしなくていいよ。
 単なる見間違いってやつだ。」
「いつ、どこで見たの?」
「…んー、草原のフィールド。ちょっと前…だったかな?
 天気いいのにキノコ探してたんだ。その時、ログアウトする前にチラって見えた気がして。」
「…そう。」

アリスは身を乗り出して聞いてきたが、そのまま考えた後、見間違いじゃない?と言った。
「あぁ、だよな。
 じゃ、また。」
そういって部屋を後にした。

部屋を出ると、いつもより世界は眩しく見えた。

道を行き交うアバター達は、どこか生き生きとして、表情豊かに見えた。

「…私の世界は全てを祝福してくれる、か。」

こんな“俺”でも受け入れてくれるのだろう。

「ありがとう。」


パソコンの電源を落とし、部屋の電気も切る。

ベットに倒れ込み、枕に顔を埋める。

一昨日洗濯した枕カバーは、お気に入りの柔軟剤の匂いが微かにする。

ゆっくり目を閉じると、あんなに眠る方法を考えていたのに、たやすく睡魔が襲う。
アリスのおかげでよく眠れそうだ。

口角が緩み、安らかな気持ちになった。
きっといい夢が見られる。

グットナイト。
いい夢を。

朝、目が覚めたらさっきの事を忘れているかもしれない。
けれど明日はきっと、いい日になるだろう。

おやすみ、また明日。
さぁ、幸せな明日へ。
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