戦国に埋もれし儚き恋
「沙菜、行きとおない…何故、私(ワタクシ)なのだ? 父上の娘なら沢山おる。私よりも年頃の娘がおる!」
何もかも諦めておられていた李由姫様がこんなに…嫌だ、と泣いておられる。
「初めて見つけた自由をまだ無くしとうない」
『自由を見つけたのでございますか?』
背中をさすりながら宥(ナダ)めるように聞くと
「巧哉様が言うのだ。私の周りにも気付かないだけで沢山の自由が当たり前となって隠れているのだと」
『素敵でございます』
「壁に響く巧哉様の声を聴く自由を…まだ手放したくない」
『…』
「沙菜に我が儘を言える自由も、この庭を見れる自由も……折角見つけることが出来たのに」
無くしとうない
と消え入りそうな声に涙が流れました。