Kill Love
ホテルに戻ると、彼はワインを開けた。

ここへ来る途中で買ってきたワインだ。

グラスは部屋に備え付けられていたので、俺は2つのグラスをテーブルに置いた。

「お前の頭痛の種、一つは減ったな」

「おかげさまで。しかし『本命』はまだですが」

「『本命』ね」

注がれたワイングラスを持つと、彼はグラスを合わせた。

「それでは、良き秘書の苦労を労って」

「…それはどうも」

ワインを一口飲むも、正直味なんて分からない。

…この男の近くにいると、全ての感覚が鈍くなる。

「相変わらず、オレを殺したくてたまらないのか?」

目の前のソファに腰掛けた男を、俺は力の限り睨み付ける。

「当然でしょう? その為に、俺はあなたを守り、側にいるんですから」

他の誰にも手出しが出来ぬよう、傷付けられぬように、俺は彼の側にいる。

―俺が彼を殺す為に―
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