真実の奥に。
「♪♪♪~」

今は休み時間。

プリクラ切る担当を任されたあたしは、自分の席でハサミを持って5等分にしていた


ドラマのエンディングで有名な曲を鼻歌で歌っていたが、

突然それを止められてしまった


「何?プリクラ?」

声のする方を向くと、そこには八木が立って、あたしのプリクラを覗き込んでいた


あの日から、あたしと八木は休み時間に時々話す仲になっていた

大した話をするわけじゃないんだけどね



「うん。昨日5人で久々に遊んだの」

ハサミを再開しながら答える


「ふーん・・・。」

そう言って、八木は切り落とされたプリクラを手に取り、
じっと眺め始めた


「・・・本田、全部笑顔だ。こんな顔するんだな」

その声にあたしの手がピタッと止まった

ほんの少し、いつもと雰囲気が違った声に反応した

なんて言えばいいんだろう?感情が読み取れない声、とでも言っておこうか


思わず右横にいる八木を見上げた

それでもあたしの瞳に映る彼は普段の彼で、「ん?」と不思議そうな顔をした


だから、あたしはすぐに気のせいだと悟った

それに、雰囲気の違いが分かる程、八木とはそんなに親密じゃない



あ、そうそう。

”本田”は沙羅の苗字ね。確かに沙羅は人前では控えめな分、あまり笑顔を振りまかない

その分あたしたちに見せる笑顔はとても貴重なものなのだけれど!








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