花とアイドル☆《完》
花乃がまた頭を下げると、朱鷺田
さんはすぐに首を横に振る。


「あなたが謝ることではあり
ません。

今回は――
正直、私の誤算でした」


「誤算?」


「ええ。

まさか、ここまで拓斗と愛香さん
の反感をかってしまうとは、
考えていなかったんですよ」


「そうなんですか……?」


「ええ」


朱鷺田さんは頷くと、改めて花乃
の瞳をまっこうからとらえて、
ゆっくりとこう言った。


「堀内さん。

あなたはこの短い期間で、すっか
り本郷家の方々の心に、入り
込んでしまわれたようですね」


「――え?」


言われた意味がよく飲み込めず、
花乃は返答につまる。


でも、朱鷺田さんは答えを求める
こともなく、言葉を続けた。
< 299 / 474 >

この作品をシェア

pagetop