花とアイドル☆《完》
てっきり二人が並んで座っている
と思っていたベンチは、空席。


拓斗はすばやく周囲を見回して
みたが、どちらの姿も見当たら
なかった。


「元気になって、二人でどっか
行っちゃったのかしら……」


「オレ達追って、ギャラリーに
行ったんじゃない?

たしか外から回っても行ける
よな?」


「そうね……だったら行き違いに
なっちゃったのね。

とりあえず電話してみましょ」


愛香がすぐにバッグから携帯を
取り出して、ボタンを押して耳に
当てる。


しばらくじっと応答を待っていた
が――話し出すことはなく、軽い
驚きの表情を浮かべながら、腕を
下ろしてしまった。
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