【完】君色フォトグラフ
「夏の時・・・試合で、和由君がヒットを打ったときに撮ったの。和由君の笑顔があまりに素敵で、撮りたいって思ったから」


「・・・・・・」


和由君は写真を見つめたまま何も答えなかった。


「和由君は柚さんに隠れてなんかない。私は、柚さんじゃなく和由君を撮りたいって思ったの。私、和由君の写真、撮ってもいい?」


和由君が写真から私に視線をうつす。

ドキドキしながら見つめ返す。


また、断られる?


・・・・・・泣きそうだ。

けど泣かない。


答えを聞くまでは、絶対に目をそらしたくなかった。


「・・・・・・うん」


あの時とは違った。

和由君は小さく頷いた。


その時チャイムが鳴って私たちの会話は途絶えた。


和由君が私の写真をポケットにしまうのが視界にぼんやり映って分かった。


それだけで私は嬉しかった。


私の気持ちを和由君が受け止めてくれたっていうことだから。





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