婚約者☆未満
「なんか、イメージと違う感じ」
あたしがポツンと呟くと、ソファに上着を放った伊織が「そうか?」と振り向いた。
「黒とかグレーとか、もっと男っぽい部屋に住んでると思ってた」
伊織は苦笑して、ローテーブルからリモコンを取り上げてエアコンのスイッチを入れた。
「ここは新婚夫婦向けの賃貸マンションだからな。
新生活にふさわしいように明るい色調の内装なんだろう」
「そうなんだ……」
「大野に来ることが決まったのが3月半ばで、大慌てで家探ししたからな。
まあ、ここは寝に帰るだけだし、仮住まいだから何でもよかったんだ」