君に愛の唄を


マイクを通して遠くにいるみんなにまで私の歌が届いている。


みんな、笑顔だ。

私の歌で笑顔だ。


なんでか涙が滲み出て来た。


みんなの前で歌うことがこんなにも幸せなことだったなんて知らなかった。



『心菜、上手だね~。お歌さん好き?』


『うん!大好きだよ!!お母さんもお父さんも笑ってくれるもん!』



……知ってた。

私は小さい頃から歌が大好きだった。


だって、私が歌うとお母さんもお父さんも誉めてくれたし、何より私の歌で笑ってくれることが一番嬉しかった。


おばあちゃんもおじいちゃんも私の歌がとても好きだった。



私、間違ってたのかな?


小さな幸せを歌える歌手が目標だった。

だから、テレビに顔を出さなかった。


だけど、こうやってみんなの前で歌って、みんなを笑顔にすることもとても大切なことだったんだよね。


それに、何より私が楽しいと幸せだと感じることができる。
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