君に愛の唄を
「陽平、今頃なにしてんのかな?」
紗英は手に息を吹きかけながら言った。
紗英は陽平くんが大好きなんだね。
「愛しくて愛しくて仕方ない彼女を迎いに行ってるんじゃない?」
「え?」
私は笑いながら驚いた顔をしている紗英に手で『前、前』と合図した。
紗英は前を向くや否や、満面の笑みを浮かべて走り出した。
…もう、紗英ったら。
「ようへい!!」
「さ~え!迎いに来たよ!」
熱い熱い。
私のことなんてすっかり忘れて陽平くんに抱きついて甘える紗英。
私は二人を邪魔しないように、出来るだけゆっくりと歩み寄った。
「ここちゃん、いつもごめんね?」
「いえいえ。私は暇人だから、いつでもパシリに使ってよ!」
陽平くんはなら、きっと紗英を守ってくれる。
私は陽平くんを信じてる。
だって、紗英が陽平くんを信じてるんだもん!
だったら私も信じるよ!