極彩色のモノクローム
マスターの淹れてくれた珈琲を、
そっと口に含む。
じんわりと広がる苦味が私好みだった。
後味に強い酸味が残る。
「どう?」
聞かれて、
私はカップを置いた。
「酸味はもうちょい弱くてもいいかな。」
思った通りに口にしたら、
マスターは
「さすが…奈津の舌は本当に凄いよ。」
と言った。
「見た目が白黒だから、味に敏感なだけじゃない?」
私の言葉に、マスターは
「助かるよ。お世辞は下手みたいだしね。」
と言って笑ってみせた。
「あら、お世辞のほうがよろしくて?」
言ったら、
マスターは静かに笑みを漏らして
「君には敵わないよ。」
と、肩をすくめた。