極彩色のモノクローム

階段を下りて店に行くと、
綺麗な女の人がカウンターに座っていた。


「彼女が奈津。奈津、彼女は歌手の玲奈。テレビで見たことない?」

言われて、私は改めて女の人を見た。


言われてみれば、見たことがあるかもしれない。


「始めまして。倉橋 奈津です。」


私は言って、ペコリと頭を下げた。


玲奈さんは物凄く綺麗に笑うと、


「玲奈です。よろしくね奈津ちゃん。」


と言って手を差し出してくれた。


握手をしようとして、手が鉛筆で黒くなっている事に気付く。

手を引いてスカートで拭おうとしたら、
伸びて来た手に捕らえられて、
握手を交わしていた。


「この手が、この絵を描き出しているのね。」


玲奈さんは言った。


何故か、
少しドキドキしていた。


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