街で君の唄を聞いた

反論すら出来ないなんて屈辱と悔やみ以外のもの何て存在するわけではなく、堕ちる。
というか穴があったら直ぐに入りたい。

…抜け出す方法知らないからやっぱやめ。

だってあれだ、穴に入った後どうすんの。
誰かに助けてもらう訳じゃあないし、自分で頑張ろうなんて思わない。
逆に萎える。



「あ、皆お帰り」

「おかえりー…って、誰やねん」

「え、もしかして声の主?は、一緒に居るなんて意味わからん」



思った通りの反応だ。


…つか声の主がコイツだって忘れてたな。
歌うんだ、コイツ。

透き通るような声出しやがって、ちょっと聴き入っちまったじゃねーかコノヤロウ。


――また誰かを忘れるわけでもない♪

――自分を否定するわけでもない♪

――だって独りぼっちなのには変わらない♪




まるでお前自身の為の唄。
ラグアス自身の唄だ。

何を抱えてその唄を歌っているのかは知らない。知れるはずがない。
過去に秘められた事も、勿論知らない。

ただ、純粋に独りになりたくなかっただけではないのだろうか。
一体何年、彼は独りで生き続けてきたのだろうか。


天涯孤独の月読族の末裔―――。


力を与えられた時はどうだった?

周りに人がいなくなってどう思った?

悲しいの他に、一体何があるんだろう。
独りだけ残ったのには、理由があってこそだけども、やっぱり独りは悲しいんだろうな。



“独りは嫌だ”



もしも彼がこんな事を口にしたら、その時はもう潮時だ。

溢れすぎてどうしようもなくなる。


それが独りぼっちの、最後の手前――…。



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