街で君の唄を聞いた

ラグアスの足を見た後、上を直ぐに見て、“チッ”と舌打ちをした。

しゃがむと何か唱え始めて、短剣をゆっくり抜き出した。


ぬるりと短剣に付着しているラグアスの血。

抜かれている時、痛そうな表情を浮かべた。

傷の所をを包帯で巻くと、ヴィーノはラグアスをおぶった。



「応急処置をしただけだ。急いで城の医療室に行くぞ!」







街中を皆で走り抜けていると、賑やかだった街が不穏なものに変化した。

居心地の悪さを感じると、コルクがいきなり力を使い出した。



「こんな時に何力使ってんの!?」

「白装束の奴がこっちを狙ってた…。多分さっきのもアイツがやったんとちゃう?」



逃げられたけど、と付け足す。

確かに…魔法移動が無ければ移動してもそう遠くには居ないし…。



「それでも今はラグアスを優先しよう」

「せやな」



街の人達が此方を見ようが、今は城に向かって走るのみ。

今は人の視線なんて気にしてる場合じゃない!



そうだよ。だから気付かなかった。

君が涙目になっていた事。



「…選ばれし者達ですね」

「ああ。だが今は王女に会うよりコイツを治癒してほしい」

「分かりました。医務室に案内致します」



黄色の服を身に纏った門番が180°回って歩き出す。
声からして女の人なんだろうけど、ちょっと小さいな。

コツコツとヒールの音を鳴らして、医務室へと案内される。

クリーム色の建物に入ると、医務室らしきとこだった。



「どうされました?」

「怪我を負っている者がいる。この者達は選ばれし者だ。必ず治してくれ」

「はいっ!では此方の台へ乗せてください!」



テキパキとやってるなぁ…。

生死は問わないけど、やっぱり苦しんでるのは見たくない。

早く直って、元気になってほしい。



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