街で君の唄を聞いた
「やっぱり!顎に黒子が無いから…息子さんかしら?瓜二つね!」
「あの…貴女は?」
「やだ、私ったら。私このベルファミーの店主…の妻のエリフって言うの。貴男のお父さん、ヴェリアス=ノクラムさんとは今の東大陸の剣学院(ソルスルーカ)の同級生なの。よくお相手してもらったわぁ」
うふふ、と笑うエリフさん。
昔懐かしむ顔は、何だか寂しそうだ。
…でもまさかヴィーノのお父さんのお知り合い――同級生が此処にいるなんてな。
あたしもヴィーノも思ってもいなかった。
「そちらは?まさ「ただの友人と思っていただければ幸いです」
スパン。
まるで胡瓜を切るかのように切りましたね!
まぁあたしもそう思ってるから心配なさんなよヴィーノさん。
「甘いものが好きだなんて、ヴェリアスさんにソックリね」
「えっ、お前甘いもん嫌いじゃなかったっけ?」
「…………………………嫌いじゃない」
え、何これデレに入んの?
いやでも、赤い。耳赤い。絶対赤面!
とか思って顔を覗こうとするも、あっさりとかわされてしまう。
はっはーん、これは照れてるな。
「さては騎士団長だから、甘いもの好きって思われたくないんだろ?剣の腕前はピカ一!魔法も使える!容姿も良いとくれば、甘いもの好きとかバレたくないもんなぁ〜?」
「へぇ!貴男騎士団長なのね!ヴェリアスさんの跡継ぎだなんて、流石は剣学院一番の息子!」
「そーなのか!つーかお前何赤くなってんだよ!照れてねーでこっち向け!」
ったく、何赤くなってんだか!
ぐいっと襟の部分を掴んで、そっぽを向いていた顔を無理矢理自分の方へ向かせる。
一瞬目を見開いたかと思えば、目だけふいっと逸らす。
「別に好きなものぐらい晒しても可笑しくねーだろ。…アイツ等は別として。あたしも甘いもん好きだからよ、北大陸行って連れてきて、東大陸に戻ったら菓子いっぱい食おーぜ?」
うん。これは本音だ。
甘いもん食えば疲れも取れるだろ。
ヴィーノが目をこっちに向けた。
やっとこっちを見た。
真っ直ぐとした視線を送る。
そしたら真っ直ぐとした視線が返ってくる。
…良い眼だ。