花の魔女

それにしてもどうしてこんなに……と、そこで昨夜のことを思い出した。


「アナベラさんたちはもう戻ってきてるの?」


ナーベルの問いに、フィオーレが首を横に振った。


「まだ。どうやら昨夜、また別のところで魔物が現れたようですわ」


「そう……」


ルッツとのやりとりが夢ではなかったのだと、ナーベルが少し沈んでいると、ジェイクがむにっとナーベルの頬を引っ張った。


「いたっ」


「ああっ!ジェイク何てことを!」


ジェイクはフィオーレに手を掴まれる前にさっとナーベルから手を離し、じろりとナーベルを見た。


「おいこら、ナーベル」


「え……」


抓られた頬に手をあてがいながら、立ち上がったジェイクを見上げた。


「お前は余計な心配をしているようだが。何のために俺たちがここにいると思ってる。修行をみるためだけにいるわけじゃないんだぞ」


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