夏の幻
遠くでまた鈴が、チリンと鳴ったのが聞こえた。
俺は目を細めて、高い秋の空を見上げる。
…ねぇミーコ。
君も今、この空をどこかで眺めているのかな。
赤い着物をしゃんと着て、あの鈴をチリンと鳴らして。
足に力を入れる。
思い切りペダルを踏み込み、秋の風を存分に感じる。
…夏は終わった。
俺もまた、踏み出さなきゃ。
秋の風の中に、「シロ」と呼ぶ声が聞こえた様な気がした。
それはいつまでも鮮やかなままの…
夏の幻。
【fin,】


