飴色蝶 *Ⅱ*
伊納組と復縁する事を、先代の
正二が許す訳が無い事を
ここにいる連中はもちろん
庵が一番、分かっていた。

その夜、庵は正二の家へと
訪ねて行く。

部屋の外まで響く、正二の
怒鳴り声。

「イオリ、お前は何を
 考えている
 ハツマは裏切り者だぞ
 そんな奴と復縁するなど
 考えられん
 
 俺は、伊納組の復縁を
 絶対に許さない
 せっかく治まっている
 内部抗争が、また近いうちに
 勃発するかもしれない
 
 会澤組と友好関係を築く方が
 この先、高月組は
 ずっと安泰でいられるはず」

庵は、刺すような瞳で
正二に聞いた。

「先代、貴方は何をそんなに
 恐れているのですか?
 極道に安泰など、決して
 あり得ない
 今までも、これからも」

庵の言葉に、正二の顔色が
変わる。
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