飴色蝶 *Ⅱ*
彼女の、この笑顔を

ずっと近くで見つめていたい。

煙を深く吐いた後、煙草を
灰皿に置きながら庵は言う。

「すみれ
 一緒に暮らさないか?」  

庵の思い掛けない一言に
菫は驚き、戸惑う。

「・・・うそ
 本気じゃないでしょう?」

放心状態の菫、その頬に庵は
手を翳して真剣な表情で伝える

「本気だよ、この部屋は
 出た方がいいな
 どこか、二人で暮らせる
 部屋を探そう」

「どうしたの?イオリ」

「どうもしないさ」

「私、ずっと、願ってた
 貴方と、一緒に暮らせたら
 どんなに幸せだろうって・・
 
 だけど、幾ら願っても
 貴方は絶対に『うん』とは
 言ってくれないことも
 分かっていた、それなのに
 ・・・・・・
 今日のイオリ、変だよ
 おかしいよ」
< 72 / 410 >

この作品をシェア

pagetop