飴色蝶 *Ⅱ*
「俺も、そう思うよ
 だけど、お前の望みを
 何でも叶えてやりたいんだ
 お前の喜ぶ顔が見たい」
  
菫の瞳から、涙が零れた。
 
「本当に、私の望み
 何でも叶えてくれる?」

「ああ、お前が
 笑っていてくれるなら」

菫は涙を拭い、大きく深呼吸
をした後、自分の一番
叶えてほしい望みを口にする。

「もしも貴方が、今後、抗争
 で命を亡くしたとしても
 貴方の後を追ったりしない
 ちゃんと、頑張って一人でも
 生きて行くと約束する
 
 だから、お願い、私を貴方の
 家族にしてください」
 
「すみれ・・・」

「貴方と同じ姓を名乗って
 貴方の子供を産んで
 貴方と同じお墓に入りたい
 貴方とずっと、どこまでも
 一緒にいたい
 ずっとずっと、離れたくない」

そう話す菫は、もう泣いてなど
いなかった。

真っ直ぐに庵だけを見つめる
その澄んだ眼差しは
彼の胸を貫き震わせた。
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