~秘メゴト~
 先輩がお父さんと住んでいるというマンションは、本当に私の家の近所だった。

 こんなに近かったとは…中学のときの私が知ったら、ストーカーしていたかも知れない、なんて。



 指紋認識タイプのオートロック開け、先輩はエントランスへと私を促す。

 そこは、磨かれた黒い大理石の床が広がり、色彩が乱反射するステンドグラスと、焦げ茶の革張りのソファの応接セットが迎える豪奢な空間だった。


 アンティークなデザインの総硝子のエレベーターに乗り、最上階へと昇る。

 毛足の長い漆黒の絨毯が敷き詰められたその階は、広いフロアにニ戸しか部屋がない。


 …先輩のお父さんって、どんなお仕事してるんだろ…?


 先輩が益々手の届かない人に思われて、ちょっと胸が痛くなった――。




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