~秘メゴト~
 先輩はときどき、優しく私に触れる。

 そして、その度に私の身体に赤いしるしを遺していく。

 まるで、なにかの儀式のように。



 そのしるしが薄くなった頃、また私は彼に抱かれるのだ。




 周りから見れば『仲の良い恋人同士』


 その実、まだ私は今にもはちきれそうな「好き」を胸に秘めたまま、打ち明けられずにいる。


 私が想いを告白しても、変わらず傍にいてくれますか?


 重くなって、離れていってしまわない?


 こんなに近くにいられるようになって、突然突き放されてしまったら?


 彼の腕の温もりに慣れてしまう自分が怖い。


 私に触れる指を、待ち焦がれる自分が怖い。



 彼が隣に居なくなっても、私は立っていられるかしら……?





.
< 136 / 169 >

この作品をシェア

pagetop