~秘メゴト~
「ダメダメ。そんなネガティヴじゃ」


 HR前の朝のひととき、瑠璃は私の席の前に座り、英語の課題を写している。

 瑠璃は大和撫子みたいな外見の割に、性格はあっけらかんというか大雑把というか…とにかくこまかいことは気にしない。

 なので、課題なんか滅多にやってこないの。


「告白しちゃいなよ…あっスペル違った」

「そんな簡単に…」

「簡単じゃん。んなうじうじ悩んでるより『好き』って云っちゃった方がよっぽど楽よ。ス、キ、って云うだけだよ? カンタンカンタン」

「……じゃあ、瑠璃はうちのおにいちゃんに『好き』って簡単に云える?」

「いっ……云えるわけないじゃん!」


 瑠璃は小さい頃からおにいちゃんのことが好きだ。

 表面に出して騒いだりはしないけれど、すぐ真っ赤になるからバレバレ。そういうところは大和撫子みたいに奥床しい。

 当のおにいちゃんは、瑠璃の気持ちには全く気付いていないと思う。

 手前みそってやつだけど、我が兄ながらおにいちゃんはカッコイイ。

 だから、女の子からの電話やプレゼントはめちゃめちゃ多いけれど、未だに彼女を家に連れてきたりしたことはない。

 変なとこカタイんだよね。

 瑠璃とおにいちゃんならお似合いだと思うんだけれど。


「あたしなんか相手にされてないからいいんだよっ。今は姫乃のことでしょ!」


 お。逃げたな。


「姫乃たちはいっぱいえっちしちゃってるような関係でしょ!? えっちの最中に、盛り上がるのに任せて一言云っちゃえばいいんだよ」

「な…」

「ハダカ見られてんだもん、今更告白なんて恥ずかしくないじゃん」

「しーっ 声おっきいっ」


 慌てて瑠璃の口を塞いだ。

 まったく、恥も外聞もありゃしないんだから。





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