~秘メゴト~
 …姫乃と、付き合っているのか?


 端から見れば、恐らく付き合っているように見えるだろう。

 だが、実際はどうだ?

 俺はただ、あの夜に姫乃に仕出かしたことに対する負い目から、彼女の傍にいるんだ。

 それによって、一緒に過ごす時間は確かに増えたが、どちらかから告白なりをして付き合い始めたという訳ではない。

 まして、あんな目に遭わされた彼女に憎まれていて当然だ。

 他人から憎悪されるのは決して良い気分じゃないが、例えそうでも、俺は姫乃の傍にいなくてはならないと思っている。


 …何故だ?


 どうして傍にいなければならないのだろう。

 姫乃の本心は、俺の顔などもう見たくないかも知れないのに。

 それでも傍に居ることが、果たして罪の償いになるのだろうか?


 俺はあの夜、自分のなかの怒りや苛立ちを抑え切れず、たまたま居合わせた姫乃を無理矢理抱いてしまった。


 彼女は俺を赦しはしないだろう。

 もう後戻りは出来ないし、赦しを請おうとも思ってもいない。


 俺は償いをしたいだけなんだ。


 でも、それなら。

 姫乃の前に姿を現さないことこそ、彼女が望んでいることなんじゃないだろうか。




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