翡翠の悪魔~クライシス・ゾーン~
 青年より乙女に勧めたほうが効果的かもしれない、マスターの思惑は見事にあたった。

 無垢(むく)な笑顔でトドメの一言。


「リュートだったら大丈夫だよ!」


 ……本当に事もなげに言ってくれる。こうも無邪気に言われては返す言葉もない。
 青年は、一つ、大きく息を吐き出すと


「もらっていくぞ」


 奪うように羊皮紙を取り上げた。渋っていたわりに決断した後の行動は早い。
荷袋をかついで颯爽(さっそう)と扉に向かう青年の後を、乙女があわてて追いかけた。


「気をつけてな!」


 立ち去る二人の背に激励の言葉を贈る。



“隻眼の自由戦士”リュート
“空色の神官戦士”ティリス

 彼らの数ある冒険譚の一つが
 今ひっそりと

 幕を開けた──
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