GATE OF WORLD
「ワイは別に、出ていけとも、もう来るなとも言ってへんやろに……」

ポリポリと頭を掻き毟り、困ったような顔を見せた。
眉を潜めて、言う。

「ただ、経済面で困っとるワケや。だから、同じ金に困ってる奴は見捨てん。だが、軽々しくたかりに来るのは気に入らんゆーだけや。」

言って背を向ける。
なるほど、単に皮肉を言いたかっただけか。
それなのに勝手に話を拡大させられて対応に困ったのか、なるほどなるほど。

「了解、じゃあ、困った時はまた寄らせてもらうよ」
好意たっぷりな声で返事してやる。
照れくさそうに黙り込まれてしまったが、これはこれで。
サヤ以上に弄りがいのある奴かも知れない。

「良かったですね、えっと…」

満面の笑みで喜んでくれたサヤだが、そこで詰まってしまう。
なるほど、そういえば名前を名乗ってなかった。

「俺は八雲、樋口ヤクモだ」
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