軌跡
 なぁ優、きっと別の人生を歩んでいたら、おれたちはこんなふうにはならなかっただろうな。おれがしがないサラリーマンで、お前が単なるショップ店員だったら。
 でもおれたちはそんな人生に飽き足らず、夢という幻を追ってしまった。その代償が、今なんだろうな。分かっていながら、なおもそれを追ってしまう。そんな者同士だからこそ、その背中を押し合うべきだったんだろうな。
 おれが腐りそうになったとき、それを優しく叱り、救ってくれたのはお前だった。ヒロポンが現れ、もっと頑張らなくてはってときに、黙って見守ってくれたのはお前だった。Locusがここまでこれたのは、紛れもなくお前の存在があったからだ。でも、今のおれじゃまだ、お前を引っ張ってやれそうにないんだ。まだまだ、自分のことで精一杯なんだ。
 ごめん、そして、さよなら……。
 そう言ってクローゼットを閉じた。そのとき、頭の中を一つのメロディーが過ぎった。
 ……これだ。
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