軌跡
「それよりも睦也、お前は最近どうなんだよ」
「どうって、何が?」
 このタイミングで聞かれるのだ、何だかは分かっていた。だがあえて、惚けた振りをしていた。
「新曲だよ。出来ないのか?」
 やっぱり……、睦也は一つ小さな溜息を吐いてから答えた。
「最近はどうもね。ちょくちょくメロは浮かぶんだけど、どれもパッとしなくてさ」
「そっか、作ろうとしてるならいんだけど」
 作ろうとしてるならいい? その言い方が気になったが、問い正しはしなかった。
「まぁ、そういうときもあるよな。だけど頼むぜ、Locusで曲を作れるのは、おれとお前だけなんだからな」
 あぁっ、生返事になってしまったのは、バツの悪さを隠しきれなかったからだ。
< 16 / 311 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop