軌跡
「大変だったんですね。そうとも知らず、こんな出しゃばった真似して……」
「そんなことないよ。奈々ちゃんに話して、おれもスッキリしたよ」
 それは本心だった。
「そう言ってもらえると救われます。また何かあったときは、話してくださいね?」
 睦也は酔った頭で、その言葉の意味を探った。深い意味があるのか、それとも流れで口にしただけの、社交辞令なのか。その瞳を窺い見た瞬間に、それは前者であることを確信した。だからこそ、曖昧な返事しか出来なかった。
「無理しないで、いんですよ」
 奈々の嬉しそうな笑みが、微かに崩れた。
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