透明人間の恋

最近毎日尋ねて来てくれる人がいる
お父さんでもお母さんでもない
誰なのかは分からないけど多分私と同じぐらいの男の子
…これは勘だけど

その子は何にもしゃべらない
そこにいるのは分かるのに近づくこともなければ話すこともない
例えるなら…透明人間のようだと思った

その子はいつものように病室に来る
私は歌う
今日はこの前聞いて大好きになったアーティスト

｢〜〜♪

ふぅ…ねぇあなたはこの曲知ってる?
この前聞いて大好きになったの
あなたは好き…?｣

コクリと頷いた気がした

この子は何もしゃべらない
だからこそこの空間が好きだ
包帯の事に触れない
同情の言葉だってない
いつの間にか私はこの空間がこの子が大好きになっていた


お別れが近いことも知らずに