ヒトツキの恋
あたしという人間
あたしは これまでの10年間 誰かに頼る事をしなかった



10年前のあの日


母上の彼氏が死んだあの日




母上は 女手ひとつで あたしを育ててくれた

シングルマザーなんて よくある話である。


それが嫌だとは 一度も思った事がなかった


母上の苦労は 目にも明らか
骨の髄までよく分かっていた


思春期のあたしが たったひとつ 反抗したとすれば


母上の彼氏。



受け入れられないまま 彼は逝ってしまった
末期の肺癌だった



その時の 母上

彼女を目の前にして あたしは心に誓った


あたしは 彼女の恋愛に口出ししてはいけない
あたしでは 彼女を守りきれない
あたしは 強くならなければいけない
彼女に 甘えてはいけない

あたしは ひとりで生きなければならない



いつしか

あたしは 誰も信用しない 孤独な女へと成長した



満足だった

強さを手に入れたのだ




そつなく人間関係をこなし

傷付かない距離を保つ


結局 人間はひとり

前に進まなければならないのだ。
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