この気持ちどっち方向
17時を告げるチャイムがなった。授業はとっくの間に終わっていて教室には私以外誰もいない。
いつもなら数名がまだ残っていて友達とぐだぐだとりとめのない話をしていたりするのだが、ちょうどホームルームが終わるころからポツンと降りだした雨を見て激しく降る前にと部活がない人たちは慌てて帰って行ったのだ。
本当は私もその流れにのって帰ろうと思ったが、日直の仕事があって帰りそこねてしまい仕事が終わる頃には本降りになっていて1時間半ほど立ち往生している。実際には教室の自分の席に座って雨の音を聞いているだけなのだが、心情はそんな感じだ。
濡れて帰ろうかとも考えたが、家まで30分かかることを考慮すると無理に帰ってもびしょ濡れになってしまう。私自身はまあ風呂に入ればいいかと思うが問題は教科書やノートたち。できれば濡らしたくない。
机に突っ伏して目を閉じる。おかしいな、いつもならもっと教室が騒がしいのに今日は雨の音以外は何もしないや。
雨の音はポツンポツンという音からいつの間にかザーザーという音に変化していた。
雨の音を聞きながらのんびりしていると不思議と幸せな気持ちになった。静かな時間がのんびり過ぎているようでこの時間がずっと続けばいいのに。

「…なにしてんの?」
「はいいいぃぃ!」

そう思ったことがバチが当たったのか、急に後ろから声を掛けられた。
さっきまでののんびりとした空間は一気に消滅した。
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