この気持ちどっち方向
急にかけられた声に驚き顔を上げ後ろを振り返り、声をかけたであろう人の顔を見ると息が止まりかけた。
「山中さんだよね。同じクラスの」
え、なんで私の目の前に
「どうしたの?こんな雨の中。家に帰らないの?」
井草くんがいるんだ!?

「あ、いや、えっと…」
突然現れた意中の相手にどう話していいのかわからず混乱してアワアワとしていると何かを察したのか、井草くんはああと言葉を続ける。
「もしかして山中さん傘持ってこなくて家帰れないの?」
「えっいや・・・あの・・・」
わー!!!ダメだ!緊張して言葉が出てこない。焦ってばかりで言葉にできない私を待ってくれる井草くんは、私が会話続行不可能とわかったからか爆弾発言をしてきた。
「なら俺と一緒に帰る?」
「!?」

衝撃的な発言をされた私はフリーズをした。
え、井草くんは何て言った?
オレトイッショニカエル…?
イッショニ、イグサクントカエル…?
私の頭が働くことを放置した。ああ、これが俗に言うキャパオーバー。冷静に物事を判断出来なくなりました。
そして私は何を血迷ったのか
「お願いします…」
と呟いてしまったのだ…。


***

下駄箱に向かうために私たちは教室を出た。
私の通う学校は一年生、二年生、三年生のクラスと職員室、校長室がある北館と美術室や理科室、生徒会室、図書室などがある南館に別れており、北館と南館を繋ぐ渡り廊下がある。下駄箱は南館にあるため、学生が帰るには必然的に一階から四階のどれか一つの渡り廊下を通らないといけない。私たち二年生の教室は三階にあるので、一階から三階のどれか一つの渡り廊下を通ることになる。井草くんと私は三階渡り廊下を渡ってから玄関に向かうことにした。

「「………」」
む、無言が辛い。
伊草くんとした会話と言ったら「い、井草くんは部活大丈夫なの?」「ああ、今日は外で部活やる日だったから雨でなくなったよ」ぐらいである。
というか、井草くんっていつもよく喋ってるよね?やっぱり私相手じゃ話してもつまらないのかな?
喋ることがないと頭の中で色々考えてしまう。
嫌だな、こんな自分。消えてしまいたい…。
どんどんネガティブな考えになってしまう。駄目だ、一度考えると止まらなくなる。
ぐるぐる回る嫌な思考にどんどん下を向いてしまう。
私たちは渡り廊下を渡り一階に向けて階段を降りるとこにさしかかっていた。
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