先生
「どちら様ですか?」


女の人の声がした。

取りあえず名乗ると玄関のドアが開いた。


飯塚だった。


しかも制服姿だし。

ポケットからクマを出して、飯塚が差し出した手に乗せた。

すると、クマを握りしめて涙を零した。

飯塚が幼い時に、泣かない為のお守りにと、亡くなった
おばあさんが作ってくれた物だった。


愛がいっぱい詰まったクマのお守り。


それを愛おしく握りしめる飯塚。


ホントは絶対にしてはいけない事。


だけど、俺は破る。

飯塚が一人で泣かない様に…。


少しでも、お守りになってやりたい。


純粋に、そう思ったんだ……。



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