散らないサクラ
またしても頭の中で駆け巡る疑問。
仮にも教師と生徒、女の家、住む。
グルグルと回る思考を整理し始めた俺を佐倉は笑った。
「細かい事を気にしない! 男でしょう」
「馬鹿か、てめえは」
「じゃあ、また女のところ転々とするの? そういうのって面倒くさいの知ってるでしょ?」
まあ、確かに。
それに今後の事についてもゆっくりと考えたいと思っていた。
もしかしたらこれはいい提案なのかもしれない。
向こうから差し出された手だ、家賃云々はどうにかなるんだろうし。
頭の中ですべての合理が合い、俺は佐倉の目を見ると頷いた。
「世話ンなる」
「ん」
佐倉はガキみたいに歯を出して笑った。
初めてみた表情に、俺の心臓が浮く。
ドクドクドクドク、激しいとまでは言わないが、動悸が速くなる。
初めての感覚、初めての感情。
ああ、でも。
悪くない。
「佐倉」
俺は自分でも驚くほど優しい声で佐倉を呼んだ。
呼ばれて振り返った佐倉に俺は表情を作らず、口を開く。
「俺はアンタに惚れてるよ」
言ったと同時に風が桜の花びらを攫い、桜吹雪となって俺たちを取り囲んだ。