未来から来たころしやさん

2.The killer who came from the future

「うわああぁぁ!!!」
僕は誰かに追われてる。逃げるしかない!後ろを振り返ってはいけない!と、自分に言い聞かせながら。ふと、あの少女の台詞が頭を過った
『17時頃に死ぬ』
という、いたずらのような台詞。あれは本当だったんだ…。だって現に、シャキシャキ、という金属と金属が擦れ合う音がするからだ。そのまま走っていると、僕の隣の店の壁に亀裂が走った。そして、壁が大きな石の塊となって、僕の進路を断った
「!!」
あまりの衝撃に声も無く立ち尽くしていると、僕の背後から、ジャリ、と砂を踏むような音がした。ゆっくりと振り返ると、真っ先に大きな鋏が目に飛び込んできた。次に白いワンピースに、白いエプロン、頭のカチューシャまで白だ。巷では良く知られるメイド服って奴だ
「やっと、止まってくれたわね」
そう言って、かき上げる髪の色まで白だ。脱色でもしたかのような、見事な白髪だ
「漸くあんたを見付けたのに、あんた逃げるんだもの」
そりゃあ、いきなりあんな大きな鋏を振り回し始めたら、誰だって逃げると思います。それにあの鋏、あの少女の背丈と同じ長さだし。大体、150㎝ってところか
「何で……」
漸く絞り出した声は、今までで一番情けなかった
「僕を狙うんだ………?」
そう問われた少女は一瞬ぽかんとしたが、その後何かを思い出し、一人納得していた
「成る程…。今のあんたは何も知らないのか」
「何を……知らないって?」
そんな僕の問いを無視して、少女は、ニヤリ、と怪しく笑む
「まあ、良いわ。知らない方が得って事もあるしね。じゃ、永遠にお休みなさい」
鋏の先を目一杯開くと、僕の胴体を裂く勢いのまま突進してきた。逃げたい!そう思っているのに恐怖で足が、手が、声が動かない。あまりの恐怖に、つい目を閉じてしまっていた
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