偽りの結婚



ラルフに触れないようにと布団をかぶったはずなのに、いつの間にかラルフの背に回された手はしっかりと衣を掴んでいた。


と、とにかく起きましょう、ソフィア様達が帰ってくるかもしれないわ。




「ラルフ…起きてる?」


おずおずと尋ねるが、返事は返ってこない。


……やっぱり


ラルフが疲れて帰ってきた日は、私よりも早く起きる事はほとんどない。

それこそ、私が身じろぎをしても起きないほどにぐっすりと寝ている。

離宮からここまでの道のりを馬で駆けてきたから疲れているのね。


ごめんなさい…でも、ありがとう…


けれど、このまま寝ているわけにはいかない。




「ねぇ…もう、起きなきゃ」


「………」


ラルフの背中に回した手を目の前の胸に持ってきて、軽く押しながら呼びかけて見るが、返ってくるのは無言。

身じろぎ一つで起きると言ったのは誰よ…





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