偽りの結婚


イリアがそんな厭味を言うのもいつもの事。

改めて自分の格好を見てもイリアの言う通りだと思う。

元は鮮やかだったドレスも泥や葉で汚れ、くすんでいる。

けれど、私はこんな身なりでも古くから続くスターン家の伯爵令嬢だった。

貴族の中でも伯爵令嬢ともなれば、身分は高い方でそれなりに優雅な生活ができるが、現在のスターン家はその爵位に見合った生活もできていない。

それは、目の前の母と姉が原因だった。

正確には亡き父が後妻として迎えたミランダとその連れ子イリアだ。



父は早くに私の母を亡くし、ミランダと再婚した。

しかし、父であるハロルドが亡くなってからは継母と義姉に実権を握られていて。

それこそスターン家が蓄えていた宝石や土地などの財産の全てを抑えられてしまった。


本来スターン家の血を正当に受け継いでいるはずの私にも、平等に財産が分け与えられるはずだったが、実際はスターン家の最高権力者である継母に財産が集中しているのが現実だ。



< 4 / 561 >

この作品をシェア

pagetop