偽りの結婚




スターン家の屋敷は、以前とは見違えるほどに立派になった。

外装から庭から調度品の数々まで全て一級品をそろえた。

そうすることで、シェイリーンが落ちぶれた伯爵家の人間だというイメージを払拭できると考えて。



コン、コンッ―――

自分が改装させたスターン家の家の扉を叩く。



……誰もいないのか?

扉を叩いても誰も出てこない。




コン、コンッ―――

二度目に扉を叩いた後…




「しつこいわよ、家には入れないって何度言ったら…」


苛々とした口調で、義姉のイリアが出てきた。

その話し方は、まるで伯爵家の令嬢とは思えない。

頭の中ではそんなことを思いながらも、顔は紳士的な笑顔を張り付ける。



「お久しぶりです」


何度か、この屋敷には足を運んでいた。

ちゃんと妻の実家へ赴いている夫の姿というものを、牽制の意味を込めて知らしめておくために。



しかし……


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