偽りの結婚



「な、何のことかしら」


本当はラルフの言葉の意味に気づいていたけれど、知らないふりをする。

誤魔化すために上半身を起こし、ラルフの視線から逃れた。

すると、ラルフも体を起こし私の顔を覗き込む。



ドキッ…―――――


へらっと笑っているようで人の事はちゃんと見ていて、逃さない。

人の心を見透かすようなこの瞳は苦手だ。




「僕が寝ていてさえいれば害がないだの言っていたじゃないか。あれはどういう意味なんだ?」

「それは…貴方が眠っていて大人しいと、私も周りも楽なのにという意味よ」


つまり、多くの女性のところをふらふら行ったり来たりせず、ちゃんとしたパートナーを選べば皆も納得するだろうし、私もこの偽りの関係を終わらせることができるということを言いたかったのだ。



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