Parting tears
 こんな暗い場所で独りになるのが怖かった私は、この時とても安堵したのを覚えている。その頃怖い話しをよく皆でしていたので、トイレの中で思い出し、怖くなっていたのだ。

 
「結麻ちゃんの誕生日って八月何日?」


 何で分かったんだろう。そう思いながらも、始めて名前を呼ばれて心臓の鼓動が速まった。


「えっ、何で分かったの? 誕生日は八月八日だけど」


 驚いて訊くと、和哉は端整な顔で笑った。綺麗な笑顔が印象的である。


「さっき、誕生日過ぎてすぐ免許取りに行って、四ヶ月経つって云ってたから」


 成程。私の話しをよく聞いていたのか。じゃ和哉は誕生日いつなんだろう。
 特に理由もないが、同じ質問をした。


「和哉君は誕生日いつなの?」


「俺は十二月一日」


「じゃ、誕生日迎えたばかりだね」


 今日が十二月六日だから、和哉が誕生日を迎えて五日目か。
< 10 / 79 >

この作品をシェア

pagetop