Parting tears
 時間はどのくらい経っていたのか分からなかったが、私は段々冷えたせいかトイレに行きたくなった。ここでトイレ行くと云えば、大の方だと笑われることが目に見えていたので、云いたくなかったが、限界に達し、私は立ち上がった。


「私トイレ行ってくるよ。あそこに見えるのがトイレだよね?」


 少し離れたところにトイレらしき建物が見えたので、指さして皆に問うた。

 すると、真っ先に和哉が立ち上がって答えた。


「俺も行こうっと。多分あれトイレだよ」


 そして私と和哉は並んで歩き出し、数歩進んだ時振り返ると、美久と今西と隼人はもう別の話題で盛り上がっているようだったので、私は再び前を向いて歩いた。


「免許取ってどのくらい経つの?」


 ふいに和哉が話しかけてきたのだが、その声は甘く、心地良い響きに思えた。


「誕生日過ぎて、すぐ取りに行ったから四ヶ月くらいかな。和哉君はマニュアル?」


「そう。マニュアル取らなかったの?」


「だって難しそうだもん。私と美久はオートマ限定だよ」


 その当時、私達の周りで、女性はオートマ限定を取るのが多かった。マニュアル車より、オートマの方が運転も、免許を取るのも楽だからだと思う。

 それきり私と和哉は会話が続かず、トイレの入り口で「じゃ」と云うと男子トイレと女子トイレに別れた。

 用を済ませ、私が出てくると、既に入り口で和哉が待っている。
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