Parting tears
 カラオケを楽しんだ後は、大輔の家に行くことになった。カラオケ店から歩いて十分くらいなので、すぐ到着したのだが、何度見ても大輔の家は豪邸で、入り難い雰囲気に圧倒される。

 大きな屋敷に、広い庭、まるで絵に描いたような社長宅。

 屋敷に入り、大輔の部屋へ向かった。しかし私は大輔の部屋があまり好きではない。何故なら、爬虫類を飼っているからである。私は爬虫類が嫌いだが、大輔は相当好きなようだ。

 私は嫌いな爬虫類達のガラスケースを一瞥すると、ソファに腰掛けた。


「あのさ、結麻の携帯見せてよ」


「何で?」


「男が登録されてないか確認したいから」


 唐突に云いだした大輔の目は怖かった。おそらく私を疑っているのだろう。


「いいよ確認しなくても」


 笑い顔を作り、穏やかに答えたのだが、大輔は私のカバンから勝手に携帯を取り出したのだ。見られたくない私は、やめてよと云いながら手を伸ばしたが、大輔は素早くメモリーをチェックし始めていた。


「おい、何だよ和哉って誰だよ! やっぱり浮気してたんだな!」


「違うよ。地元の友達で、この前美久から教えて貰ったばかりだよ」


 そう答えたのだが、大輔は顔を真っ赤にさせ、怒りを露わにしていた。


「嘘吐くな! 最近夜遊びが酷いから怪しいとは思ってたんだよ」


 私は携帯を取り返すと、足早に逃げるように大輔の部屋を出た。
 ヤキモチ妬くのは分かるけれど、何かうざいなぁ。そんなふうにしか思わなかった。

 それから大輔の家を出て、自宅へ帰ったのである。

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