Parting tears
 私は子供の頃英語を習っており、英語は堪能だった。驚いたことに、和哉は留学経験もあり、私と同じく英語に堪能だったのである。たまに云い辛い言葉を英語に換え、会話することもあった。それが妙に新鮮な付き合い方にも思える。

 
 流れる景色が都会を過ぎ、山道にさしかかった頃、運転を代わった。


「ここからの山道は危ないから、俺が運転代わるよ」


「ありがとう。じゃ宜しくね」


 そして車はどんどん山を登り、細く狭い道が続いた。両側には木が生い茂り、時折射し込む日の光が眩しくて、お揃いのサングラスをかけた。そのサングラスはデートした際、二人で気に入って買ったものである。

 やがて車はY県に入り、温泉街を目指して快調に進んでいた。

 Y県は和哉が何回か訪れたことのある県だったので、分からないことは和哉に質問していた。

 一つの温泉宿に着き、車を停めると、私と和哉は意気揚々と車を降りた。


「やっと着いたな。タオル忘れるなよ。行こう」


 そう云って私に手を差し出した。こうして私達はいつも寄り添っていたと記憶している。

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